作品特集二十首連作

 地下鉄

いずこより迷いきたるか地下鉄の窓にしずくの光るを見つく

隣には〈めぢから〉のある人がおり睫毛は最大積載ならむ

のびやかにくるぶし見せて降車しつ学生服の男の子たち

ケータイをぱたりと閉じて青年がツーステップで乗り込みてくる

何の曲弾いているらむ少年はかばんの上を鍵盤にして

足音が音符のごとしスキップでわれを追い越す少女の軽さ

草原をわたりし風の震えなり両国駅に響くホーミー

     沿線にインターナショナルスクールがあるらしい
民族の違う子ふたり真剣にあやとりをする朝の電車に

繰り返し〈たんぼ〉や〈川〉が現るる小さき両手の空間を見つ

改札を堰き止めし朝舌打ちをされれば一日耳に残れり
*ルビ 一日=ひとひ

しねしねと唱えるごとくチョコボール食べ続けいるスーツの男

地下鉄の座席に蔦の男いてヒトにも這い性立性のあり

水飲み場にうずくまる人、いないかのように黙して過ぎ行きにけり

青タイルのみ踏むというマイルール持つ少年がジグザク進む

既定値は俯き加減 われの名が呼ばれたようで顔を上げたり

ゆくりなく銀の羽舞い降りき目の前に立つ男の手より
*ルビ 銀=しろがね

ターコイズの小さき青がつきたるはイーグルフェザー ナバホだろうか

「すみません」と屈むる人のワイシャツの青さが空のように思えり

中堅のサラリーマンと思えるに〈リトル・ベア〉など名前のあるや

てのひらに羽根を返しぬインディアン・ネームは結局聞かざるままに



『塔』12月恒例の作品特集(公募)に応募した20首連作が掲載されました♪
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by mizuki_nim | 2008-12-22 18:40 |