『塔』4月号掲載歌

バスを待ちおれば空車のタクシーが速度緩めてわが前を過ぐ

エジプトのミイラのようだMRIに収納されてゆくとき

「息、吸って・止めて・吐いて」の一連で時折「吐いて」を省略さるる

「やっぱりねぇ」光にフィルム透かしつつ医師は二つの選択肢挙ぐ

いつの日か後悔する日があるのかな がんばらないと決めたわたしを

今回は縦に切らせてもらうねと内診しつつ担当医が言う

全摘の手術をすると電話すれば母がなぜだかあやまりくるる

肉球に触れたかりしよ狛犬の前肢に額(ぬか)そっと押し当つ


(小林幸子氏選)
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by mizuki_nim | 2009-04-20 19:42 |