塔10月号特別作品

金沢行

連山ののち海の見え飛行機は滑走路へとかろく降り立つ

海沿いの高速道を走るとき海が破線のごとく現わる

満員の<秋聲号>とうボンネットバスを見送る 秋声ってだれ

   金沢城公園そばの白鳥路には三文豪の像がある
それぞれの手に赤き花のせられて秋声鏡花犀星がおり

夕暮れの遊歩道にて犀星が黒き羽ペン持ちて詩を書く

   21世紀美術館屋外展示 フローリアン・クラール「アリナのためのクラング・フェルト・ナンバー3」
「もしもーし」どこのどなたの声なるか未知と繋がりいる筒電話

宇宙人との交信もできそうでラッパに顔を突っ込んでみる

双手(もろて)垂らし芝生に立てるわが胴を貫くようにつばくらめ飛ぶ

犀川大橋横切る鳶はいと鋭き横顔見せてのち上昇す

「見た?」「見た!」と妹と顔見合わせぬ猛禽類のくちばしのカーヴ

鷹匠のごとくこぶしを突き出せばよかったと鳶の旋回のした

   雨宝院のお地蔵様は10の願いをきいてくださるのだと、帰京して知った
門の脇にお地蔵さんが笑まいおり犀星も手を合わせたろうか

テクストの文字立ち上がる心地せり犀星の詩を肉声に聴きて

   泉鏡花記念館
館長さんふいにあらわれ手を広ぐ「生家はこっちに建っていました」

道々に和菓子屋酒屋のぞきいるわれらはだらな姉妹と思う

右側に座ると海が見えるよと運転手さんが教えてくるる







今年のGWに金沢へ行ったときのことを詠みました。
犀星の羽ペン。おちゃめな人がいるものです。
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特別作品・・・15首以上の表題つき作品(公募)。
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by mizuki_nim | 2009-10-17 22:01 |