『塔』6月号掲載歌

読み終えし新聞ぎゅぎゅっと丸めいて警棒のごと持つ男いる

メンコ打つようにPASMOを打ちつけて改札抜ける初老の男

地下鉄の階段のぼれば白石家式場という看板に遇う

交差点みおろしながら食べている春のてんぷらわずかに苦し

水脈(みお)をひくテールライトのあかるさがとぎれぬ街に春雨の降る

「元気そうでいいね」と三月(みつき)に一度会う医師があかるく言いくるる春

本を持つ手のかたちにて万葉集読めと言わるる夢より覚めぬ


(池本一郎氏選)
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by mizuki_nim | 2010-08-08 13:44 |