甘く匂い来

夕方の地下鉄に乗り込むと、和風のいい匂いがした。
乗った車両には忘年会に行くと思しきおじさんの集団がいたが、ちがうようだ。
この匂い、香水じゃない。
なんだっけなぁ、この匂い。
何気なく座席の方に目をやると、おすもうさんがひとり座っていた。
ああ、鬢つけ油の匂いだ。
木綿(に見えた)の着物一枚で寒くないのかなと思っていると
駅で人が降りてお相撲さんの全容が見えた。
片手にコートを持っていた。
そうだよね、やっぱ、寒いよね~。なんか、安心した。
おすもうさんは両国の一駅手前、蔵前で降りて行った。

  あの辻を曲がりしはきっと力士なり鬢つけ油の甘く匂い来   森尻理恵
                                          『塔』2011年11月号 
※原文の「辻」は一点しんにょう。
[PR]

by mizuki_nim | 2011-12-09 21:23 | 徒然につづる