舫ひ船

さみしいなんてうたふなといふその人がまじめなかほでさみしいよつて

夕暮れを駅まで歩く森永のキャラメル口のなかに放つて

思ひ出すたびに記憶は書き換はるやうな気がして 鳥が横切る

お向かひのビルに当たりて夕ひかり東の窓ゆ部屋に差し込む

湯を沸かすあひだに夢はうすれもうあなたのかほを思ひ出せない

泣き切つてしまふのがいい曇天を映せる水に舫ひ船揺る

さみしいからうたふのだらうでもなにをどううたつてもさみしいままだ


(塔2月号掲載 三井修氏選)
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by mizuki_nim | 2013-03-20 19:26 |