ほうたる

暗闇がふかぶかとある抽斗を下段からあけ浴衣選びぬ
このつぎは螢に生まれこむと言ふ橋の上(へ)に立つ君の横顔
暗がりにみづは見えねどほうたるのひかりが揺らぎ水面(みなも)とわかる
あぢさゐの葉かげに螢いりゆけばほとりにひかる木のあらはれぬ
ルシフェラーゼ、と言へば笑へる君のゐてひとつの歌をともに抱きぬ
ほうたるを包まむとしてひとの手はいともたやすく離れてしまふ

(塔10月号 小林幸子氏選)


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by mizuki_nim | 2014-04-06 14:13 |