カテゴリ:本歌取り( 22 )

011 わたの原

011: 参議篁=小野篁(さんぎたかむら = おののたかむら)
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人のつり舟
わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね
大海原をいくつもの島を目指して舟を漕いで行ったと人に伝えて下さい、漁師の舟よ。

わたの原・・・「わた」は海の古称。
八十島・・・八十は、数の多いこと。たくさんの島
かけて・・・目指して。
海人・・・漁師。
 
*作者について
平安時代の学者・歌人。小野妹子の子孫。
冥府の役人だったという伝説があります。

遣唐使を拒否して隠岐に流される時に京に残った人たちに宛てて詠んだ歌です。

本歌取りのキーワード:海、船、島、海人
抜き手切り時間の海を泳いでゆく遠くに見える灯りが君か
八十島をわたり舟漕ぐ海人(うみんちゅ)よニライカナイはいずこにかある


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by mizuki_nim | 2005-08-09 22:10 | 本歌取り

010 これやこの

010: 蝉丸(せみまる)
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関
これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき
これがまさにあの、(東国に)行く人も(都に)帰ってくる人もここで別れ、知り合いもそうでない人もここで逢うという逢坂の関なのだなぁ。

これやこの・・・「これがあの噂に聞くあの」というほどの意味です。「や」は詠嘆。この句は「逢坂の関」にかかります。
行くも帰るも・・・(東国に)行く人と(都に)帰ってくる人。
知るも知らぬも・・・知人も見知らぬ人も。
逢坂の関・・・逢坂の関は、山城国(現在の京都府)と近江国(滋賀県)の境にあった関所で、この関の東側が東国だとされていた。「逢坂」は「逢ふ」の掛詞。

*作者について
逢坂の関あたりに住んでいた盲目の琵琶の名手。
今昔物語には、源博雅(博雅の三位)(夢枕版『陰陽師』における安倍晴明の相棒♪)が蝉丸の元に通い詰め秘曲を習ったというお話があります。

関所の出会いと別れは今で言うと駅や空港の出会いや別れでしょうね。

本歌取りのキーワード:逢う、別れ
叶わないときのことなど考えず片道切符持って発つひと
泣かないし見送りなんて行かないしサヨナラだって言いたくないし


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by mizuki_nim | 2005-08-06 20:23 | 本歌取り

009 花の色は

009: 小野小町(おののこまち)
花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに
はなのいろは うつりにけりな いたずらに わがみよにふる ながめせしまに春の長雨で桜の花の色はすっかり褪せてしまいました。いたずらに物思いにふけっている間にわたしの容姿も衰えてしまいました。

花・・・桜の花。ここでは女性(小町)のことでもある。
うつりにけりな・・・花の色について言う場合は(色が)褪せてしまったという意味になる。最後の「な」は詠嘆を表す。
世にふる・・・世を過ごす。世には男女の仲という意味もある。ふるは次のながめ(長雨)ににもかかる。
ながめ・・・物思いにふける。長雨と掛詞になっている。

*作者について
たいそうな美人だったという小野小町(何しろ世界三大美女の一人)。非常にモテたらしいです。百夜通いの深草少将の伝説などが後世になって作られました。

全然美人ではないわたくしですが、身につまされるというか、心がえぐられるようにイタイ歌ですなぁ。高校時代に読んだ時にはそんな風に思わなかったのにねぇ。共感できるほどトシをとったということなのですねぇ。嗚呼。

本歌取りのキーワード:花、色、移る
人もまた移りゆく花 いたずらに時を過ごしてセピアの色に
残ったのはセピア色の思い出だけ。

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by mizuki_nim | 2005-08-03 21:58 | 本歌取り

008 わが庵は

008: 喜撰法師(きせんほうし)
わが庵は 都のたつみ しかぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり
わがいおは みやこのたつみ しかぞすむ よをうじやまと ひとはいうなり
わたしの庵は都の東南(宇治)にあって(宇治の山の中に)さように住んでいる。その宇治の山をわたしが世を「憂」しとして入ったうじ山であると世間の人は言っているそうだ。

都のたつみ・・・都の東南。宇治は平安京の東南にある。「たつみ」は辰巳・巽と書き、十二支によって方角をあらわしたもの。
しかぞすむ・・・さようにすむ。「しか(然)」の指示する内容は、「都のたつみ」であり、「宇治の山の中に隠れて」という意。「しか」に、十二支の「鹿」を掛けているという説がある。
世をうぢ山・・・「世を憂し」「宇治山」の掛詞。宇治山は今の京都府宇治市周辺の山。ここでも「う(卯)」「うし(丑)」と十二支を詠み込んでいる。
人はいふなり・・・世間の人は言っているそうだ。「なり」は伝聞推定の助動詞。

*作者について
宇治山に住んでいた僧。

高校生の時に暗記させられた時は意味が全然わからず、「しかぞすむ」は「山の中に鹿と一緒に住んでいる」のだと思っていました(汗
今回、ちゃんと調べてみて、言葉遊びに満ちた歌なのだと知りました。たつ・み・しか・う・うし、と十二支のうち五つを詠み込むということをしているんだそうです。あれ?でも、鹿って今の十二支にはないんですけど。

本歌取りのキーワード:たつみ
うしとらにあやかし出でてきゃわきゃわと暫し遊びて明け方に消ゆ
わが家は都のたつみ下町にありて渋いと人は言うなり

一首目。うしとらの方角は鬼が出入りする方角、鬼門と言われています。うしとらと言えば『うしおととら』っすよ。とらがかわいくて好きでした(わからない方すみません。少年漫画です)。恐ろしいというよりは愛嬌のあるあやかしたちが出てくるイメージで詠みました。
二首目。偶然ですが、わたしも都の辰巳に住んでおります。職場の同期には「渋い」と言われました。確かにオシャレな街ではありません。が、わたしは気に入ってます。大型書店がないのが不満といえば不満かなぁ。

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by mizuki_nim | 2005-08-03 21:57 | 本歌取り

007 天の原

007: 安倍仲麿(あべのなかまろ)
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも
大空を振り仰いで遠くの月を眺めている。あの月は、昔、(ふるさとの)三笠山に出ていた月と同じなのだろうかなぁ。

天の原・・・大空。
三笠山・・・奈良市の市街地の東にある春日(かすが)神社後方の山。若草山の南にあり、春日山の西峰をなす。標高二八二メートル。若草山をさしていうことも多い。みかさのやま。

*作者について
安倍仲麻呂とも。遣唐留学生として唐に渡りましたが、帰国はかないませんでした。
あの安倍晴明のご先祖様♪と言われております。

望郷ですね。遥か唐の国からふるさとの奈良を思って詠んだ歌でしょうか。
今は飛行機で簡単に行けてしまう中国ですが、昔は命がけでした。帰りたいと思いつつ帰国を果たせなかった人がどれほどいたのでしょう。
『中国の壷』(川原泉著 白泉社文庫)を思い出してしまいました。
まったくの余談ですが、三笠ときくとついついどら焼きの「三笠」を思い浮かべる食いしん坊なわたくしです。奈良の湖月という和菓子屋さんの三笠が巨大でおいしいです(大好物)♪

本歌取りのキーワード:空、月
この空に北極星を見つけなきゃ たぶん今頃君も見ている
ミッションの合間に青き遊星を ふるさとを見る宇宙飛行士

遊星・・・惑星のこと。
宇宙から見たわたしたちのふるさとはまだ青いんですね。
「望郷」というものをわたしは殆ど感じたことがないので、これをキーワードには出来ないと思いました。そこで「遠く離れた場所で別々に同じものを見る」というシュチュエーションを持ってきました。
実は月で詠んだものもあるのですが題詠マラソン2005に投稿することにしました。(^^ゞ
キーワードを軸に考えていくとキーワードが入らない歌になることもあります。今回はちょうどスペースシャトルのニュースなども入り想像が広がっていきました。

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by mizuki_nim | 2005-08-01 21:36 | 本歌取り

006 かささぎの

006: 中納言家持=大伴家持(ちゅうなごんやかもち = おおとものやかもち)
かささぎの わたせる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
(宮中にある)かささぎの橋に白く霜が降っている。ああ、もう夜も更けてしまったのだなぁ。

かささぎの橋・・・七夕の夜、牽牛(けんぎゆう)・織女の二星が会うとき、カササギが翼を並べて天の川に渡すという想像上の橋。また、宮中を天上になぞらえて、その殿舎の階段。

冬に宮中で宿直をしている時に詠んだのではないでしょうか。
「今宵はあなたに会いに行けないのです・・・・・・」なーんてね。
もうひとつの解釈として「天の川を見るとカササギが翼を連ねてつくったという橋に霜のように星が白く輝いている。もう夜も更けてしまったのだなぁ」というものもあります。「月落ち烏鳴いて霜天に満つ」(張継「楓橋夜泊」)を踏まえているとされています。
どちらの解釈にしても、冬の歌ということになりますね。

*作者について
万葉集の編纂者の一人。

本歌取りのキーワード:かささぎ橋、夜、星、天の川、冬
星の船もかささぎ橋もない夜は会えないあえないキミニアエナイ
星空を見上げていても独りでは探せぬ冬の大三角を

冬の大三角・・・オリオン座のペテルギウス、子犬座のプロキオン、大犬座のシリウスで描く三角形
星空を見るのは大好きですが、冬の大三角はもちろん夏の大三角や星座を上手く見つけることができません。

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by mizuki_nim | 2005-07-31 16:40 | 本歌取り

005 奥山に

005: 猿丸大夫(さるまるだゆう)
奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋はかなしき
おくやまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき山の奥に散った紅葉を踏みわけて入っていくと、やはり紅葉を踏み分けて入ってきた鹿が妻を恋しく思って鳴く声が聞こえる。そんな時、秋はかなしいものだと思うのだ。

「紅葉をふみわけ」るのは、人か鹿か。説はわかれています。
奥山に紅葉ふみわけ、鳴く鹿の とすると「人」がふみわける
奥山の、紅葉ふみわけ鳴く鹿の とすると「鹿」がふみわける
ですが、作者が鹿に自分を重ねているととらえ、「紅葉をふみわけ」るのは人と鹿の両方という説を採りたいと思います。
鹿は妻を恋うて鳴くと考えられていました。

*作者について
生没年不詳の伝説の歌人。名前からして伝説っぽいですね。

本歌取りのキーワード:紅葉、秋、鳴く、恋う
丸窓に秋の風景切り取って桂離宮に紅葉あざやか
恋しいと鳴ける獣に生まれれば胸が苦しいこともなかった

二首目、鹿というよりは狼の遠吠えのイメージがうかんでしまった。狼王ロボ、ブランカを恋うるみたいな・・・。え、狼王ロボを知らない?シートン動物記っす。

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by mizuki_nim | 2005-07-31 13:29 | 本歌取り

004 田子の浦に

004: 山部赤人(やまべのあかひと)
田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
たごのうらに うちいでてみれば しろたえの ふじのたかねに ゆきはふりつつ
田子の浦に出て見れば富士山に白い雪が降っていますね。

田子の浦・・・静岡県富士市南部の海岸。古くは富士川河口以西をさした。富士山眺望の名所や白砂青松(はくしやせいしよう)の地として知られる。

「うち出でて見れば」の「うち」は、接頭語で特に意味はなし。

*作者について
奈良時代の歌人。柿本人麿と共に歌聖といわれています。

昔も今も「富士は日本一の山」なんだよねぇ。
万葉集では
田子の浦ゆうち出でて見れば 真白にぞ 富士(不尽)の高嶺に 雪は降りける
となっています。わたしはこちら方が好きです。「ゆ」というのは「~から」という意。
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本歌取りのキーワード:富士の高嶺、雪
<ひかり>から富士の高嶺の白雪をしみじみと見る異国の人と
いつだったか京都へ行く新幹線・ひかり号の中で、前方に座っていた外国からの旅行者のグループが車窓から見えた富士山をじーっと黙って見つめていました。一緒に眺めながら、なんだか嬉しくなったのでした。

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by mizuki_nim | 2005-07-30 17:02 | 本歌取り

003 あしひきの

003: 柿本人麿(かきのもとのひとまろ)
あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
あしひきの やまどりのおの しだりおの ながながしよを ひとりかもねん
山鳥の長く垂れ下がった尾のような長い長い夜をあなたと離れてひとり寝するのかなぁ・・・・・・。

あしひきの・・・枕詞。
1.「山」および「山」を含む語「山田」「山鳥」などにかかる。
2.「峰(を)」「八峰(やつを)」「岩根(いはね)」などにかかる。
のち、「あしびき」と濁るようになった。
山鳥の・・・枕詞。
1.山鳥は雌雄が峰を隔てて別々に寝るといわれたところから、「ひとり寝(ぬ)」にかかる。
2.山鳥の尾の意で、「尾」と同音を含む「尾上(をのへ)」や似た音を含む「おのれ」「おのづから」などにかかる。
しだる・・・垂ると書く。長くたれ下がる。しだれる。したがって「しだり尾」は長く垂れ下がった尾の意。
かも・・・詠嘆の気持ちを込めた疑問の意を表す。…かなあ。

*作者について
柿本人麻呂とも。謎なお方。『人麻呂の暗号』なんて本もあるくらいですから。持統天皇、文武天皇に仕えたようで、歌聖といわれています。

官吏だったようなので単身赴任中の歌でしょうか。さみしい夜なのです。
長い夜といえば松山千春・・・・・・じゃない秋(秋の夜長)ですが、山鳥の季語は春。秋の夜なのか春の夜なのか。どちらにしろ、ひとりの夜は長くてさみしいんです。
実はこの歌、本当に人麿作かどうかはわかりません。万葉集に
思へども 思ひもかねつ あしひきの 山鳥の尾の 長きこの夜を
という作者不詳の歌があり、その左註に「或本の歌に曰く」としてこの歌が出ています。しかし、人麿作とは書いてありません。

本歌取りのキーワード:さみしい夜
真夜中に着信音がひとつ鳴るさみしいんだね わたしもなんだ
あ、だからと言ってイタ電はいけませんよ。

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by mizuki_nim | 2005-07-29 22:34 | 本歌取り

002 春過ぎて

002: 持統天皇(じとうてんのう)
春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山
はるすぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすちょう あまのかぐやま
春が過ぎて夏が来たようです。(夏の衣替えのために)白い衣を干すという天の香具山に真っ白な衣が干してありますね。

てふ(ちょう)・・・と言う
白妙・・・カジノキやコウゾの皮の繊維で織った白い布。白栲。
白妙の・・・枕詞。
1.衣・布に関する「衣」「袖(そで)」「袂(たもと)」「たすき」「紐(ひも)」「領布(ひれ)」などにかかる。
2.白い色の意から、「雲」「雪」「波」「浜のまさご」などにかかる。
3.栲(たえ)の材料となる藤、また白栲で作る木綿(ゆう)と同音の「ふぢ」「ゆふ(木綿・夕)」にかかる。
天の香具山・・・奈良県橿原(かしはら)市にある山。海抜152メートル。畝傍(うねび)山・耳成(みみなし)山とともに大和三山の一。山容はなだらかで樹木におおわれる。あめのかぐやま。

*作者について
天智天皇の娘。天武天皇の皇后。天武天皇の死後政務に携わり、皇太子草壁皇子の死後、即位して天皇となった。

さわやかな夏って感じがします。初夏ですね。青と白と緑の色が浮かんできます。
この歌も万葉集では
春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣干したり 天の香具山
となっています。どうして変わっちゃうのかしら。
「白妙の衣」は斎衣のことのようです。また、山にかかる雲を表しているという説もあります。

本歌取りのキーワード:夏、白
はつなつの風を招いて真っ白なレースのカーテン乾かしている

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by mizuki_nim | 2005-07-29 22:19 | 本歌取り