カテゴリ:塔( 82 )

塔6月号掲載歌

ポケットにチョコを多めに入れてゆくわれにもきっとある帰巣性

帰らむと歩道に人があふれいて知らない人と話したりする

人混みのなかで大きく息をつく永代橋が見えてきたとき

大川の匂い吸いこみ夜に立つスカイツリーの灯りうつくし

何事もなかったように土曜日の朝ゴミを出す階段下りて

地震なのかわれだけ揺れているのかがもうわからない 指が冷たい

スーパーに行けば揚げたてコロッケやかぼちゃの煮物がならんでおりぬ


(三井修氏選)
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by mizuki_nim | 2011-07-03 13:22 |

塔5月号掲載歌

冬の陽をひかる産毛にかえながら辛夷が春を告げる準備す

鍼灸師が左の膝に手を当てて「ここだここだ」と二度つぶやきぬ

とりあえず温かいもの食べておけ冬に気分が沈んだのなら

温きものおさめむとして学食に餡かけうどんの食券を買う

甘きものはこころ温むるものなりて黒ごまプリンの食券も買う

『病院のかかり方』とう案内が箸や醤油と並び立ちおり

とけのこる半透明の雪の上をお守り揺らし子が走りゆく


(山下洋氏選)



人によって違うようなのですが、
私の場合、
左膝のツボを温めるようにすると
お腹の調子が良くなる(腸がよく動くようになる)そうです。
人体の不可思議。
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by mizuki_nim | 2011-07-03 13:18 |

塔4月号掲載歌

正月のごちそう皿にとりわけて父に供える丸き背の母

われの師の新春詠を「さみしい」と新聞たたみ母が言いおり

ただ一度昏き器を訪れき河野裕子をまだ知らぬ頃

「お母さん、琵琶湖は海だ」遠足を終え七歳のわれが告げたり

さざ波のひかりがあまた広がれるわれの記憶の中の淡海

通勤に近江屋のうら通り過ぐわれに親しき<近江>という語

しゅんしゅんと草の伸びいる道野辺にタカサブロウはいるのだろうか


(花山多佳子氏選)


10歳まで大阪に住んでいた。
小学校1年か2年の時の遠足で琵琶湖&お城(たぶん彦根城)に行った。
お城に関しては、まだひこにゃんはいなくて、天守閣へのぼる階段の1段の高さに驚いたことしか覚えていない。
琵琶湖は、向こう岸が見えなくて、海みたいに波があって、「これは海だろう」と思った。
湖って池のちょっとおおきいやつだと思っていたので、衝撃だった。
長いこと湖畔に突っ立っていた、気がするが、集団行動だったはずなので、記憶違いかもしれない。
近江に行ったのはだたそれっきりだ。
今年のお正月にテレビを見ていたら、琵琶湖が映った。
子供のころの記憶がよみがえった。

琵琶湖を見に行きたい。
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by mizuki_nim | 2011-05-08 14:55 |

矢印を持つ

大好きな町に行くのにぐずぐずと『てっぱん』見ており鞄を持ちて

駅前に桜花咲きおり生前に届きしという『十月桜』

たくさんの椅子が並べる会場に大きな笑みが花に包まる

封筒に挨拶状を入れながら歩く姿を探してしまう

百単位に資料まとめてゆく友の仕事モードの横顔を見る

まだ山は夏の緑を残しいて「いいところね」と言う人のあり

矢印を持ちいるわれに会釈してゆく人多し『塔』の人ならむ

何百という人たちが矢印の指す方向に歩いてゆけり

ばさりとう音近ければ白鷺がいまし大きく頭上を渡る

泣かないと決めていたのに四つめの弔辞のときにあふれてしまう

お盆から一輪とりて歩む間を硬くありたる白菊の茎

八十歳(はちじゅう)になってもいっしょに歌会に行こうね、という約束がある

面差しのよく似たひとがコスモスの鉢植えひとつ手渡しくれぬ

「ありがとう」といくども言いて会場を回れるひとの隣の空間

歩みゆくリズムで揺るるコスモスと東京駅の改札通る


(特別作品・小林幸子氏選)
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by mizuki_nim | 2011-04-21 22:18 |

『塔』3月号掲載歌

ストールを巻きなおすひとの背景に新幹線がゆっくりよぎる

生きている、とは変わりゆくことならむ父の勤めし社屋あらざり

数寄屋橋に近いからだと父は言いき入社理由を聞きたるときに

ゼロ多き宝飾店のドアマンに買わざる人と見極めらるる

休日の銀座通りにシャンソンが流れてゆるき歩調となりぬ

おばあさんが杖を支点に揺れながら『枯葉』のメロディー口ずさみおり


(吉川宏志氏選)
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by mizuki_nim | 2011-04-17 20:32 |

『塔』2月号掲載歌

花びらの一枚だけがほどけいてどちら周りで開いてゆくか

花びらのじょじょに透けゆくコスモスにペットボトルで水をやる朝

縮れたる花びら摘めるベランダに泣くのはおやめとう声聞こゆ

西へ行く車窓に朝の日を浴びて富士の稜線くきやかに見ゆ

立冬の朝の空気の冷たさを嵐電天神川駅に知る

紅き葉をくるんくるんと回しつつ琵琶湖疏水に沿いて歩けり



(池本一郎氏選)
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by mizuki_nim | 2011-03-27 15:32 |

塔1月号掲載歌

うしないし半身のことつや消しのメタルのような声で読み出す

その声がふるえるたびにさざ波のたつみずうみのほとりを思う

キャラメルのエンゼルマークをセロファンの上から撫でて師は笑まいおり
 
思い出の少なきわれに残るもの「歌をやめたらあきませんよ」

なに色のコスモス咲いているだろう岩倉長谷町三〇〇-一


(山下洋氏選)
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by mizuki_nim | 2011-02-05 14:44 |

塔12月号掲載歌

無防備に入れし片あし湯から抜く道後は熱き湯であると知る

「あいちゃん」と後姿に名を呼べば笑まいてくるる塔の友達

寄りそえる少女を膝の上に抱き伊予万歳を観る人の背(せな)

電停に三人が降るまた明日会えるみたいな別れ方なり

会場に笑顔の写真ありたるを話しておればつん、とこみあぐ

思い出がなみだを誘う二人して目にちから入れケーキ食べおり

友の子がだいじな友を貸しくれぬぬいぐるみの毛のやわらかきかな


(真中朋久氏選)

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by mizuki_nim | 2010-12-20 20:56 |

『塔』11月号掲載歌

あの夏は暑かったのか 窓越しの青空だけが記憶より出づ

背上げせしベッドに胡坐かきながら死は怖くないと父は言いき

「予定より早すぎるが」と豊水の果汁に指を濡らして言いき

仏壇に濃く果物の匂うとき父が味見をしていると思う

定年後するはずだった篆刻の入門書の背が棚に色褪す

墓参とは決して言わざり<別宅>に行くとう母が帽子を被る


(花山多佳子氏選)
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by mizuki_nim | 2010-11-24 21:37 |

『塔』10月号掲載歌

七月の雨を含みて山の木の濃きみどり色ぼうとふくらむ

八雲立つ出雲にあれば深緑(しんりょく)のなだりにかかるを雲と思ほゆ

南国のひとが畳に胡坐かき歌は愛だと笑まいたまえり

スサノオの降りたる山のふもとまで真闇のなかを走りゆくバス

あまたあるあきらめしこと言わぬままかばんをたすきにかけなおす人

七夕の風に短冊まわりおり「裕子さんに会えますように」


(小林幸子氏選)

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by mizuki_nim | 2010-10-23 16:42 |