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ひかりを運ぶ

全摘を決めし日ひとりクリスマスイルミネーション眺めに行きぬ

臓器ひとつどうってことないわれはまだひかる時間の真ん中にいる

東京の空に見つくる流れ星「万一」という事例を思う

介護者の欄に母の名記すときわれは不肖の娘と思う

手術前の説明をする担当医は最上級の悲観主義者(ペシミスト)なり

カーテンで遮られたるプライバシー人が通ればひらひらと揺る

しょうが焼きのレシピを聞きて帰りゆくひとのスーツの丸き背が見ゆ

縦に切ると言われたるわが腹の上に美容ローラー転がしており

幾重にも本人確認されこの名ほんとうにわれの名前だろうか

絶え間なき痛みに眸を閉ずるとき闇に獣の目が光りいる

巻きひげを点滴台に絡ませるごとく廊下を進みてゆけり

看護師に構わるること減りゆきてシーツのほころび目を見つけたり

凸凹の町にBB弾のごと走る子どもが多きこと知る

窓際のポトスが毎日伸びていて通りがかりに触ってしまう

灯る火のあらざる洞にわが卵はいまもひかりを運びいるらむ

空白の時間を欲りて駅前のコーヒーショップの椅子に腰掛く

やわらかき首もてわれを見つめいるみどりごの目に映るひかりよ

地上口に切り取られいる空のなかエンドロールのごと雲流る



(塔2月号 特別作品掲載 小林幸子氏選)
特別作品・・・15首以上の公募作品
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by mizuki_nim | 2010-03-07 21:51 |