<   2011年 04月 ( 2 )   > この月の画像一覧

矢印を持つ

大好きな町に行くのにぐずぐずと『てっぱん』見ており鞄を持ちて

駅前に桜花咲きおり生前に届きしという『十月桜』

たくさんの椅子が並べる会場に大きな笑みが花に包まる

封筒に挨拶状を入れながら歩く姿を探してしまう

百単位に資料まとめてゆく友の仕事モードの横顔を見る

まだ山は夏の緑を残しいて「いいところね」と言う人のあり

矢印を持ちいるわれに会釈してゆく人多し『塔』の人ならむ

何百という人たちが矢印の指す方向に歩いてゆけり

ばさりとう音近ければ白鷺がいまし大きく頭上を渡る

泣かないと決めていたのに四つめの弔辞のときにあふれてしまう

お盆から一輪とりて歩む間を硬くありたる白菊の茎

八十歳(はちじゅう)になってもいっしょに歌会に行こうね、という約束がある

面差しのよく似たひとがコスモスの鉢植えひとつ手渡しくれぬ

「ありがとう」といくども言いて会場を回れるひとの隣の空間

歩みゆくリズムで揺るるコスモスと東京駅の改札通る


(特別作品・小林幸子氏選)
[PR]

by mizuki_nim | 2011-04-21 22:18 |

『塔』3月号掲載歌

ストールを巻きなおすひとの背景に新幹線がゆっくりよぎる

生きている、とは変わりゆくことならむ父の勤めし社屋あらざり

数寄屋橋に近いからだと父は言いき入社理由を聞きたるときに

ゼロ多き宝飾店のドアマンに買わざる人と見極めらるる

休日の銀座通りにシャンソンが流れてゆるき歩調となりぬ

おばあさんが杖を支点に揺れながら『枯葉』のメロディー口ずさみおり


(吉川宏志氏選)
[PR]

by mizuki_nim | 2011-04-17 20:32 |